若年性AGA 遺伝的要因への対抗 

1. 10代から20代初期のAGA発症確率

日本皮膚科学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」や、その他の臨床データによると、日本におけるAGAの年齢別発症率は以下のようになっています。

• 10代: 数%程度と推測されています。

• 20代: 約10%

• 30代: 約20%

• 40代: 約30%

• 50代以降: 40%以上

このデータからわかるように、10代での発症率は低いものの、20代に入ると約10人に1人がAGAを発症する可能性があるとされており、決して他人事ではありません。若年性AGAは、成人以降に発症するAGAと比較して、進行が早い傾向にあることも指摘されています。

2. 遺伝的要因が発症に与える影響

AGAの発症には、主に以下の2つの遺伝的要因が関与していると考えられています。

• 男性ホルモン受容体（アンドロゲン受容体：AR）の感受性: 髪の成長を妨げるジヒドロテストステロン（DHT）と結合する受容体の感受性が高いほど、AGAを発症しやすくなります。この受容体の感受性を決定する遺伝子はX染色体上に存在するため、母親からの遺伝（特に母方の祖父の薄毛）が強く影響するとされています。

• 5αリダクターゼの活性度: テストステロンをDHTに変換する酵素である5αリダクターゼの活性度が高いほど、DHTの生成量が増え、AGAのリスクが高まります。この酵素の活性度も遺伝によって決まります。

これらの遺伝的要因が複合的に作用し、AGAの発症リスクを高めます。特に若い年代でAGAを発症する場合、これらの遺伝的素因が強く関与している可能性が高いです。

具体的な遺伝確率に関するデータとしては、以下のような報告があります。

• 母方の祖父が薄毛の場合: 約75%の確率でAGAを発症する可能性が高まるとされています。

• 両親ともに薄毛の遺伝子を持つ場合: 約90%に達することもあります。

• 父親が薄毛の場合: 息子がAGAを発症する確率は約50%とされています。

これらの数値はあくまで目安であり、個々の遺伝子の組み合わせや生活習慣、ストレスなど、他の要因もAGAの発症には影響します。

しかし、家族に薄毛の方がいる場合、特に母方の家系に薄毛の男性が多い場合は、若年性AGAのリスクが高いと認識しておくことが重要です。

3. 遺伝子検査の活用

最近では、AGAの発症リスクや特定の治療薬（フィナステリドなど）の効果予測を評価するAGA遺伝子検査も利用できるようになっています。

口腔粘膜などを採取して行われるこの検査により、自身のアンドロゲン受容体の感受性や5αリダクターゼの活性度の傾向を知ることができ、将来の薄毛リスクを把握する上で役立ちます。

ただし、遺伝子検査の結果はあくまで「リスク」を示すものであり、検査で高リスクと判定されたからといって必ずしもAGAを発症するわけではありませんし、低リスクと判定されても発症しないわけではありません。

生活習慣の改善や早期の対策が重要であることは変わりありません。

日本人類遺伝学会の見解

日本の「人類遺伝学会」は、2010年に「一般市民を対象とした遺伝子検査に関する見解」を発表しており、その中で、個人の体質を確実に表すもの、あるいはある疾患を発症するかどうかについて明確な答えを与えるものではなく、専門家にとってはその検査の意義さえ疑問視されるものであるという内容を指摘しています。

1. 医療機関での治療

遺伝的な要因によるAGAの場合でも、専門の医療機関での治療が最も効果的です。

• AGA治療薬:

  • 内服薬:

    • フィナステリド（プロペシア®など）: AGAの原因となる男性ホルモンDHT（ジヒドロテストステロン）の生成に関わる5αリダクターゼ（II型）の働きを阻害し、抜け毛の進行を抑えます。

    • デュタステリド（ザガーロ®など）: フィナステリドよりも広範囲の5αリダクターゼ（I型、II型）の働きを阻害するため、より強力にDHTの生成を抑える効果が期待されます。

  • 外用薬:

    • ミノキシジル外用薬: 頭皮の血行を促進し、毛母細胞の活動を活発にすることで発毛を促します。

• 注入療法:

  • メソセラピー: ミノキシジルや成長因子、ビタミンなどの有効成分を直接頭皮に注入し、発毛を促進します。内服薬や外用薬と併用されることが多いです。

  • HARG療法: ヒト幹細胞由来の成長因子を注入し、毛包の再生と育毛を促す再生医療的なアプローチです。

  • 毛根再生注射: 発毛を促進し毛髪を改善する効果が期待されます。

• 植毛: 自身の健康な毛髪を薄毛の部分に移植する方法です。根本的な解決策として検討されます。

• 幹細胞治療: 幹細胞を注入することで、毛髪の再生を促す新しい治療法として研究・開発が進められています。

2. 生活習慣の改善

遺伝的な素因があっても、生活習慣を整えることでAGAの進行を遅らせたり、治療効果を高めたりすることができます。

• 食事: 栄養バランスの取れた食事を心がけ、特に髪の成長に必要なタンパク質（植物性タンパク質が推奨）、ビタミン、ミネラル（亜鉛など）を積極的に摂取しましょう。ジャンクフードや脂質の摂りすぎは控えましょう。

• 睡眠: 十分な睡眠時間を確保し、睡眠の質を高めることが重要です。成長ホルモンは睡眠中に多く分泌され、髪の成長に関わります。規則正しい睡眠サイクルを維持し、就寝前のブルーライトを控えるなどが有効です。

• ストレス対策: ストレスはホルモンバランスや血行に影響を与え、薄毛を悪化させる可能性があります。適度な運動、趣味、リラクゼーションなどでストレスを解消しましょう。

• 正しいヘアケア: 頭皮を清潔に保ち、低刺激性のシャンプーを選びましょう。

3. 遺伝子検査とカウンセリング

• AGA遺伝子検査: 自身のAGA発症リスクや、特定の治療薬（フィナステリドなど）の効果予測を事前に知ることができます。これによって、より効果的な治療計画を立てることが可能になります。

• 遺伝カウンセリング: 家族歴にAGAがある場合、遺伝カウンセリングを受けることでリスク評価や予防策、治療法について専門家のアドバイスを受けることができます。

1. 頭皮の皮脂分泌の増加とベタつき

• DHTの影響: DHTは、毛母細胞だけでなく、皮脂腺にも作用して皮脂の分泌を促進します。そのため、遺伝的にDHTの影響を受けやすい若い人は、頭皮が脂っぽくなりやすく、髪の根元がベタつく、頭皮に油っぽい臭いを感じるなどの症状が現れることがあります。

• 毛穴の詰まりと炎症: 過剰な皮脂は、古くなった角質や汚れと混じり合い、毛穴を詰まらせやすくなります。これにより、アクネ菌などの常在菌が繁殖しやすくなり、頭皮の炎症（脂漏性皮膚炎）やニキビを引き起こすことがあります。炎症が慢性化すると、毛根へのダメージが蓄積され、抜け毛をさらに加速させる可能性があります。

• 脂性フケの増加: 過剰な皮脂分泌は、湿った、やや黄色がかったフケの原因にもなります。これらのフケは頭皮にべっとりと付着しやすく、かゆみや炎症を引き起こすことがあります。

2. 頭皮の乾燥とフケ

一見、皮脂の過剰分泌とは逆の現象ですが、遺伝的な要因や間違ったヘアケア、生活習慣の乱れなどによって、頭皮が乾燥し、フケが目立つようになることもあります。

• 乾燥によるターンオーバーの乱れ: 頭皮が乾燥すると、皮膚のバリア機能が低下し、未熟な角質細胞が剥がれ落ちやすくなります。これが乾性フケとして現れ、白く細かいフケがパラパラと落ちるのが特徴です。

• かゆみと炎症: 乾燥した頭皮はデリケートになり、かゆみを感じやすくなります。掻きむしることで頭皮が傷つき、炎症を引き起こすこともあります。

3. 頭皮の硬さや突っ張り感、厚みの変化

• 血行不良: AGAが進行すると、頭皮の血行が悪くなる傾向があります。血行不良の頭皮は、栄養や酸素が毛根に届きにくくなり、健康な髪の成長を妨げます。血行が悪くなると、頭皮が硬く、突っ張るような感覚を覚えることがあります。これは、頭皮の弾力性が失われ、毛髪の成長に必要な柔軟性が低下しているサインとも考えられます。

• 組織の変化（厚みの減少）: 長期的にAGAが進行すると、毛包がミニチュア化し、毛髪が細く短くなるだけでなく、頭皮自体の組織にも変化が生じることがあります。具体的には、皮下組織の脂肪層や真皮層が薄くなり、頭皮が以前よりも突っ張って硬く感じられたり、薄くなったように感じられることがあります。これは、毛髪の成長が阻害され、頭皮の健康が損なわれている状態を示唆しています。ただし、「厚みがなくなる」という表現は、実際に頭皮の皮膚組織が物理的に薄くなるというよりは、頭皮の柔軟性が失われ、血行不良や組織の萎縮による「硬さ」や「突っ張り感」として自覚されることが多いです。

1. 脂性肌（オイリースキン）

• 症状:

  • シャンプー後も数時間で頭皮や髪の根元がベタつく。

  • 頭皮に油っぽい臭いがする。

  • 髪が全体的に重く、スタイリングがしにくい。

  • フケが湿っていて、やや黄色っぽい（脂性フケ）。

  • 頭皮にニキビや炎症ができやすい。

• 期待する効能:

  • 適度な洗浄力: 過剰な皮脂や毛穴の詰まり（皮脂栓）を効果的に洗い流し、頭皮を清潔に保つ。ただし、洗浄力が強すぎると必要な皮脂まで奪い、乾燥によるトラブルを招くこともあるため、バランスが重要です。

  • 抗炎症作用: 皮脂の過剰分泌による炎症やかゆみを抑える成分（例：グリチルリチン酸2K、ピロクトンオラミン）が含まれていると良いでしょう。

  • 抗菌・殺菌作用: 皮脂を栄養源とするマラセチア菌などの繁殖を抑え、フケやかゆみを軽減する成分（例：ピロクトンオラミン、ケトコナゾール）が有効です。

• おすすめの洗浄成分:

  • アミノ酸系洗浄成分（例：ココイルグルタミン酸Na、ラウロイルメチルアラニンNa）: 比較的マイルドでありながら適度な洗浄力があり、頭皮への刺激が少ないため、必要な皮脂を落としすぎずに頭皮を清潔に保てます。

  • 一部の高級アルコール系洗浄成分（例：ラウレス硫酸Na）: 洗浄力は強いですが、頭皮への刺激が強い場合があるため、配合バランスや添加物の有無を確認し、ご自身の頭皮に合うか慎重に判断する必要があります。

2. 乾燥肌（ドライスキン）

• 症状:

  • シャンプー後に頭皮がつっぱる感じがある。

  • 頭皮がかさつき、白いパラパラとしたフケ（乾性フケ）が目立つ。

  • 頭皮にかゆみを感じやすい。

  • 髪がパサつきやすい。

• 期待する効能:

  • 高い保湿力: 頭皮の乾燥を防ぎ、潤いを保つ成分（例：ヒアルロン酸、セラミド、コラーゲン、植物エキス）が含まれていると良いでしょう。乾燥は頭皮のバリア機能を低下させ、外部刺激に弱くなるため、潤いを与えて保護することが重要です。

  • 低刺激性: 洗浄力がマイルドで、頭皮に負担をかけにくい成分配合であること。必要な皮脂まで奪いすぎないことが大切です。

  • 抗炎症作用: 乾燥によるかゆみや炎症を和らげる成分（例：グリチルリチン酸2K）も有効です。

• おすすめの洗浄成分:

  • アミノ酸系洗浄成分（例：ココイルグルタミン酸Na、ラウロイルメチルアラニンNa）: 刺激が少なく、保湿力も兼ね備えているため、乾燥肌や敏感肌の方に最適です。

  • ベタイン系洗浄成分（例：コカミドプロピルベタイン）: アミノ酸系と同様に低刺激で、保湿力が高く、敏感肌の方にも適しています。

3. 敏感肌（センシティブスキン）

• 症状:

  • 特定のシャンプーや製品で頭皮が赤くなる、かゆみが出る、ヒリヒリするといった刺激を感じやすい。

  • 季節の変わり目や体調によって頭皮の状態が変化しやすい。

  • アレルギー体質である。

• 期待する効能:

  • 徹底した低刺激性: 無添加（香料、着色料、パラベン、アルコールなど刺激性の高い成分が無配合）で、肌に優しい成分構成であること。

  • 穏やかな洗浄力: アミノ酸系やベタイン系の洗浄成分が主成分であることが望ましいです。

  • 抗炎症作用: 頭皮の炎症を鎮める成分（例：グリチルリチン酸2K、アラントイン）が含まれていると良いでしょう。

• おすすめの洗浄成分:

  • アミノ酸系洗浄成分、ベタイン系洗浄成分: 最も推奨される洗浄成分です。